見出し画像

120年続く老舗旅館がワイン造りに挑む!父から息子へ引き継がれるチャレンジ精神。

小諸で120年続く老舗旅館中棚荘は島崎藤村が鉱泉を掘る手伝いをした縁もあり、島崎藤村の宿としても有名です。5代目荘主である富岡正樹さんには4人のお子さんがいます。末っ子の隼人さんが2018年からジオヒルズワイナリー(Gio:ベトナム語で風、hills:英語で丘、風の丘を意味する)の醸造責任者としてワイン造りに情熱を燃やしています。旅館ではなく、ワイン造りを始めた経緯とこれからについてお聞きします。

画像2

日本を離れて日本の良さを再確認。結局は父の背中を追っていた。

-120年続く老舗旅館に生まれた隼人さんがなぜワイン造りを始めたのか経緯を教えてもらってもいいですか。

全ては縁とタイミングなのですが、、、

父親の正樹が新婚旅行でフランスに行った際に、ワインに興味を持ち、いつかやりたいという思いがあったみたいです。最初は2002年にマンズワインさんの契約農家としてぶどう栽培を始めたんですが、2018年のワイナリーオープンを前に自家製ワイン造りにシフトしました。

うちの旅館では、自家製の野菜を旅館の食事で出したり、以前より地産地消を実践していました。その延長線上にワインもあると考えられたので挑戦できたと思っています。

-老舗旅館なのに地産地消を実践していてすごいですね。2002年当時から栽培を手伝われていたのですか?

いえいえ。2002年、当時、私は中学生ですから、本当にお手伝いです(笑)。2010年から2015年までベトナムに行っていて、父親からワイナリーをオープンしたいから一緒にやらないかと話があり、戻る決心をしました。

画像6

-ベトナムに住んでいたのですか?海外はどうでしたか?

これも父の影響なのですが、、、

父が所属していた「そば打ちの会」が、日本の食文化をベトナムの学生に伝えるための文化交流事業を行いました。そのため、父がベトナムへ行くこととなったので、私も一緒について行きました。その時に、知り合いのNGOの方に日本語講師のボランティアに誘われ、それがきっかけで、ベトナムで日本語を教えることになりました。

ベトナムで5年間暮らしてみて、日本での暮らしやすさを改めて実感しました。一方で、ベトナムでは年長者を敬う、心の豊かさを感じました。日本を離れることで、日本の良さを改めて認識し、様々な気づきがありました。

-人生の節目にお父さんの影響がありますね。

そうですね。120年続く旅館の運営以外にも父は常に新しいことに挑戦し続ける人でした。そのせいか、子どものころに遊んだ記憶はないのですが、重機を操作するその背中で寝ていたし、働く姿も見てきました

兄弟4人のうち3人が帰ってきて父の事業を継いでいるのも、兄弟みんながそんな父の背中を見てきたからかもしれません。

画像6

ワイン造りは、カムオン(感謝)。みんなに支えられています。

-素晴らしいお父さんですね。中棚荘にも行ってみたくなりました。
ワインに話を戻しますが、2015年に戻ってからはどうされたのですか?

是非、中棚荘にもお越しください!帰国後は、千曲川ワインアカデミーの1期生として1年間勉強しました。ここでの出会いも大きかったですね。幅広い年代で職種も様々、すごい熱量を持っている人ばかりで、とても影響を受けました。

アカデミー卒業後は、2年間、自分で育てたぶどうを持ち込み醸造しました。この期間に座学と実体験がリンクすることでより理解が深まりましたね。これもとてもいい経験でした!

さらに、その2年の間に、ワイナリーが現在の場所に決まり、設計が始まり、建築と進みました。そして、2018年にワイナリーがオープンし、翌年に自家醸造でのファーストヴィンテージをリリースしました。

-ファーストヴィンテージのリリース!感慨深いものがありますね。自家醸造のワインはどうですか?

1年目はフラットに、ある意味教科書通りに造ったワインです。
それでもおいしいと言ってくれる人がいたので、うちの「ぶどう」のポテンシャルの高さを実感しましたね。

-良いぶどうが育つ土地なのですね。

そうですね。うちの畑は小諸の中でも特殊で、強粘土質の土地です。
小諸には白土馬鈴薯というジャガイモの特産品があるのですが、強粘土質の土壌でしかできません。そして、この土壌がワイン用ブドウを育てるのに適しているといわれています。

もちろん、それだけに頼るのではなく、ぶどうの生育のために風通しを良くすることを心がけています。
小諸は降水量が少なく湿気も少ないのですが、フランスに比べると梅雨もあるしどうしても湿気も多い。そのため、幹を高くし草刈りを頻繁にすることで、風通しを良くして病気や害虫を減らす工夫をしています。

-人間も風通しが良い職場だと、良い仕事に結びつきますからね。
では、その後順調に4年目を迎えているのですか?

いえいえ、なかなかそうはいきません。2年目は特に大変でした。

ひょう被害に遭い、収量が10分の1になりました。もともと収量がそんなに多くはないので、アカデミーで一緒に学んだ同期の仲間にぶどうを融通してもらい、うちのぶどうと合わせてなんとか醸造ができたという感じです。仲間との繋がりをより強く感じた年でした。

父親やアカデミーの仲間もそうですけど、自分一人ではとてもここまで来られませんでした。ワインは嗜好品なので必ず作らなければいけないというものではありません。でも、多くの人の繋がりのおかげでワインができて、飲んでいただくことができています。

飲んでいただく方も含め、ワイン造りに関わってくれた全ての方への感謝を込めてカムオンシリーズのワインを造りました。これはベトナム語で「ありがとう」という意味です。

DSC_6927_角度補正

毎年テーマをもってチャレンジしています。一生をかけて理想を求めたい。

-カムオンシリーズ、是非飲んでみたいです!今後の展望などはありますか?

私は、まだまだ経験が足りません。そのため、毎年テーマをもったワイン造りに挑戦しています。そして、この先一生をかけて自分の目指す味を追求していきたいです。結果的に理想通りの完璧なものは自分の代ではできないかもしれないですが、それでいいと思っています。自分は一生追い続けて、より良いものを皆さんに提供していきたいです。

さらに、自分が父から色々な選択肢を与えてもらったように、ワイン造りを通じて私の子どもにも、次の世代にも、色々な選択肢を残したい、小諸でのワイン文化を繋いでいきたいと思っています。

その想いを形にするために、昨年「ワイン文化を未来に繋ぐ会」を立ち上げました。

この会では小学校~高校生にぶどう作りやワイン造りを体験してもらいます。ワイン造りは6次産業なので、いろいろな経験ができます。高校生にはラベルのデザインや販売といったマーケティングの勉強もしてもらいます。

この取り組みを通じて、地元に誇れるものがあることを知ってもらい、さらに、その中からワイン造りに携わる人が出てきてくれれば、まさに、本望ですね。

画像5

-すばらしい取り組みですね!子どもたちの笑顔が目に浮かびます。ジオヒルズでは、醸造だけではなく、カフェも運営されてますよね?カフェの今後の展望はどうですか?

ありがとうございます。
カフェを併設したのはここの景色を皆さんに楽しんでもらいたかったからなんです。ここの景色は最高ですよ!天気がよければ富士山、浅間山が見えて360度のパノラマです。是非一度お越しください!「ワイナリーだけではもったいない」と、みなさんにもきっと納得してもらえると思います。

そして、この最高の場所で最高の時間をゆっくり過ごしてもらいたいというい想いがあります。なので、今後は、自家製のスパークリングワインも増やし、特別なブライダルも提案できたらいいなと思っています。

ランチ


「ワイン造りは子育て、毎年どんな子が育つかわからないのですが、試行錯誤しながら育てるたのしみはありますよ。出荷は嫁に出す感覚ですかね。自分の子どもはまだ小さいですけど(笑)。だから、おいしいと言ってもらえるのは本当にうれしいです。」と穏やかに語る隼人さん。

日本を離れて日本の良さを知り、人との出会いに感謝をしている若き醸造者の今後が実に楽しみです。

そんなジオヒルズのワインはメールで直接もしくはふるさと納税でお申し込みいただけます。もちろん、中棚荘やジオヒルズワイナリーで飲むこともできますよ。さらに、「家庭的で他とは違うブライダルを挙げたい!」と考えている方がいらっしゃいましたら、是非、連絡してみてください!!

小諸市のふるさと納税はこちらから

https://www.city.komoro.lg.jp/soshikikarasagasu/somubu/kikakuka/1/5/1/1912.html


ジオヒルズワイナリー 長野県小諸市大字山浦富士見平5656
醸造責任者 富岡隼人(30)長野県小諸市出身
2015年、千曲川ワインアカデミー1期生
2018年、ジオヒルズワイナリーオープン
2019年、自家醸造ワインのリリース
品種:ピノ・ノワール、メルロー、シャルドネ
HP:http://www.giohills.jp
mail:mimaki@giohills.jp

【編集】
柴崎尚実 I 農林課
小諸市内のワイン用ぶどう振興だけではなく、千曲川ワインバレー(東地区)の事務も担う。お酒も好きなので、消費者の立場からも市内の4つのワイナリーと4人の生産者情報を記事にします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。小諸市をもっと知っていただきたいので、PR動画を紹介します♪