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地理の先生が第2の人生をワイン造りに捧げる。小諸で日本のブルゴーニュを目指す!ドメーヌ・フジタの挑戦。

現在70歳の藤田さんは長野県小諸市でぶどう作り、ワイン造りを始めて5年目になりました。2021年には自身の醸造施設も完成し、初めて自家醸造が始まります。ここまで順調に来ているように見えますが、そこには、苦労を苦労と思わず楽しみながらワイン造りに挑戦し続ける藤田さんの姿がありました。その秘密に迫りたいと思います。

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生きた授業をするために60か国以上訪れた経験がワイン造りを始めたきっかけ


-なぜ定年後にワイン造りを始めようと思ったのですか。

神奈川の県立高校で30年以上地理など社会科の教員をしてきましたが、生徒たちに教科書だけの授業をしてもなかなか伝わりにくいと感じました。そこで、「生きた授業をする」ために世界60か国以上を訪れ実際に体験したことを授業で伝えてきました。

その際に、各国でワインに出会い、その美味しさとともに、風景の美しさ、取り巻く文化に魅かれていきました。また、希望する生徒と山梨の勝沼でワイン造りの体験実習も行いましたが、そこでさらにワイン造りの面白さを知りました。

定年が近づき、第2の人生を考えた時に、教員以外で「自分はもっと何かできる」「自分自身を証明したい」という想いがあり、旅行先のフランス・ブルゴーニュのロマネ村にある小さな家族経営のドメーヌ(※)を見たとき、ワイン造りに残りの人生をかけてみようと決心しました。

ちょうどいいタイミングで玉村豊男先生が千曲川ワインアカデミーを開校し、1期生として学べたことも大きかったです。

※ フランスブルゴーニュでぶどうの生産から醸造までする比較的小規模な生産者のこと

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デスティニーを感じた小諸の圃場


- 教員時代の経験が大きく影響してるんですね。小諸市の圃場を選んだ理由を教えてください。

ワイン造りを志してから全国の農地を見て周りました。単一品種から作るブルゴーニュのワイン造りが目標だったので、それに適した圃場を探しました。小諸に来る前にも、北海道、山梨県など、また、長野県の他の市町村なども見て周りました。

小諸に来る前に他の有力な候補地もあったのですが、小諸を訪れ、市の職員の方に現在の圃場のある耕作放棄地に案内され、その景色を見た瞬間に「デスティニー」を感じました。小諸のこの圃場ならピノ・ノワールやシャルドネの美味しいワインができるのではと直感しました。

また、60歳を過ぎてワイン造りを始める私にも市の職員の方が親身で優しかったことも決めての一つとなりました。これはお世辞じゃないので載せてください(笑)。

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造りたいワインは日本のピノ・ノワールとシャルドネ、その圃場の1年を表現するワイン

ー 大変ありがたいお褒めの言葉をいただきました。ありがとうございます。小諸で造るワインはどのようなワインを目指しているのですか。

造りたいワインは「補糖しない」「補酸しない」「混醸しない」、その圃場の一年の自然が表現されているワインです。いろんな美味しさがあると思いますが、ナチュラルな飲みやすいワインを目指しています。

圃場は標高が880m程度と高いこともあり、ぶどうが酸を残しながら熟すことができるため、高品質のワインができています。これからも毎年、工夫、努力しながらワインの品質をさらに高めていきたいと思います。

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ワイン造りは大航海時代に地図のない大海原を自分の力で挑む冒険家のよう。大変、でも面白い。

- 「ナチュラルなワイン」とても気になります!しかし、60歳を過ぎてからのチャレンジはご苦労も多いかと思いますが、その辺はいかがですか。

もちろん大変ですが、面白いです。ぶどうを栽培する環境は、圃場によってそれぞれ異なるため、他の圃場の経験が自分のぶどうにそのまま当てはまるわけではありません。また、去年の経験がそのまま活きないことも多い

今のところ、試行錯誤の連続で、枝の剪定、土づくり、最低限の農薬使用の追求など、挑戦と失敗の連続です。

大航海時代は私が好きな時代の一つですが、一つずつ進むこの感覚は、不確かな地図を片手に大海原に挑戦した大航海時代に似ていると思います。

また、ワインを造るということは高品質のぶどうを作る「農家」になればいいというわけではありません。

もちろん良いぶどうを作ることは大事ですが、その「農家」にプラスして、醸造家としての科学者(サイエンス)の側面と芸術家(アート)の側面、さらには、営業、経営など多面的な要素が必要になります。

だからこそ、ワイン造りは面白い
ですね。

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ぶどうはワインになりたがっている。実ったぶどうに寄り添って。


- 苦労を苦労と捉えず、全力で、かつ楽しみながらワインを造られていることがすごく伝わります。今後の展望などはいかがでしょうか。

最初はブルゴーニュのワインに近づけたらと思っていました。しかし、実際に造ってみるとブルゴーニュと小諸は当然のことながら、気温、降水量、さらに土壌も違います

しかし、この地で実ったぶどうに寄り添い、日本では日本のワイン、小諸では小諸の美味しいワインができるのではと考えました。例えばシャルドネの場合、ミネラル感は少ないですが、和食を含めて料理との相性が広くなるという長所になり、好評をいただいています。

「ぶどうはワインになりたがっている」という言葉があります。ぶどうを美味しいワインにすることが我々の役目、実ってくれたぶどう君たちへの恩返しです

毎年、工夫して樹齢を重ね、美味しいワインを皆さんに届けたいですね。

そして、パリからの距離と東京からの距離や交通が近似していることもあり、近隣のワイナリーさんと一緒に小諸周辺をブルゴーニュのような銘醸地にすることに、小規模ですが貢献出来たらと考えています。

2021年の秋には自宅の横に醸造施設が完成
します。今までは委託醸造でワインを造ってきましたが、自前にすることで、消費者の皆さんにより届けやすくすることができると思っています。

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メッセージ

- 今年はまた新たな挑戦が始まりますね。とても楽しみです。最後に、読者の方にメッセージをお願いいたします。

ワインは一年間の天候などその地の自然と生産者の努力が凝縮された結晶です。そのため、毎年、味わいも異なりますが、その一年のヴィンテージを感じながら味わってほしいと思います。

他のお酒も美味しいですが、ワインをもっと身近に感じてもらい、いろいろなワインを楽しんでもらいたいです。

そして、圃場に来て、栽培の様子などを知っていただきたいと思います。小諸のこの素晴らしい環境の中でぶどうが育っている様子を知ることで、ワインを一段と美味しく飲めると思います。

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現在70歳の藤田さんは「人生100年の時代、父親が85歳まで畑仕事をやっていたので、自分もあと15年は身体をいたわりながら頑張りますよ」と笑顔で語っていました。

日本のブルゴーニュワインを目指すドメーヌ・フジタのワイン。楽しみです。

バイタリティ溢れる藤田さんのワインはメールで直接ご注文いただくか、ふるさと納税返礼品「小諸産ワイン飲み比べセット」でお楽しみいただけます。

https://www.city.komoro.lg.jp/soshikikarasagasu/somubu/kikakuka/1/5/1/1912.html

株式会社ドメーヌ・フジタ 長野県小諸市滋野甲4162-221
藤田正人(70) 福井県福井市出身
30年以上神奈川県で地理など社会科の教員を勤める。
2015年、千曲川ワインアカデミー1期生
2016年、耕作放棄地を開墾し栽培スタート
2019年、ファーストビンテージ発売
品種 ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン

〇HP
http://www.nukajiggfarm.com
〇Mail
domainefujita@gmail.com

【編集】
柴崎尚実 I 農林課
小諸市内のワイン用ぶどう振興だけではなく、千曲川ワインバレー(東地区)の事務も担う。お酒も好きなので、消費者の立場からも市内の4つのワイナリーと4人の生産者情報を記事にします。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。小諸市をもっと知っていただきたいので、PR動画を紹介します♪